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第1章 8 映画

last update Last Updated: 2025-12-26 18:14:30

「お疲れさまでしたー」

今日は早番。だから18時に退社した。代理店を出て駅に向かって歩きながら、私は映画館のポスターが貼られている掲示板の前を通り過ぎ……足を止めた。

「映画かあ……」

私は溜息をついた。昨夜亮平はお姉ちゃんを映画に誘っていた。一体亮平はどんな映画に姉を誘おうとしていたのだろう……。その時、背後から声をかけられた。

「あれ、加藤さんじゃない」

振り向くとそこには井上君が立っていた。

「あれ? そっか、井上君も早番だったんだね。気付かなかったよ」

「ああ。俺はビラ配り後、直帰していいって言われてたからね。それより、何? 加藤さん。映画観るの?」

井上君は映画のポスターが貼られている掲示板を見つめた。

「う、ううん。ただ、どんな映画をやってるのかなーって思って」

すると井上君が1枚の映画のポスターに釘付けになった。

「あっ! これ! この映画……俺が観たいと思っていた映画だ! え……と上映時間は……」

井上君は自分の腕時計を見つめる。

「よし! 今から行けば間に合う! 行こう、加藤さん!」

そして何を思ったか井上君は私の左手を繋ぐと走り出した。

「え!? ちょ、ちょっと待ってよ! 私、映画観るなんて一言も……!」

井上君は走りながら私の方を振り向いた。

「いいから観に行こうぜ! 俺さあ……誰かと映画観に行って、その後お互いに感想を語り合うのが好きなんだ!」

その顔はすごく笑顔だった。まあいいか……どうせ暇だったしね……。

「うん、いいよ。そういうことなら付き合ってあげる」

そして私たちは映画館に向かって駆けて行った――

****

 それから約3時間後――

「うう……な、なんであんな怖い映画を……」

私はガタガタ震えながら恨めしそうに井上君を見た。

「ごめんごめん。ちゃんと説明してなかったよな……。俺、和製ホラー大好きなんだよ」

井上君は頭をポリポリ掻きながら照れくさそうにしている。

ここはファストフード店で私と井上君はハンバーガーセットを口にしながら先ほど観た映画の感想について語り合っていたのだけど……。今日2人で観に行ったのは私が最も苦手とする和製ホラー映画だったのだ。もう画面の半分は怖くて観ていられず、目だけしっかり閉じていたのだが、かえってそれがより一層恐怖を倍増させていた。

「だけどさ……そんなに怖かったなら途中退席すればよかったのに」

セット
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